ピアニスト廣田ゆりの部屋

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一度立ったアンテナというのは、なかなかはずれません。


弾き語りの名手マット・デニスの「Everything happens to me」は、
哀愁あるメロディが美しく、アルトサックスのおいしい音域にジャストミートなので、
アルトの方とお仕事するときは、ついやりたくなってしまうスタンダードです。

ピアノで弾いてももちろん映えるので、先日のあるライブで、ベースとDUOで演奏してみました。
私はインスト(歌なし)のときでも、お客さまには歌詞など説明してどんな曲なのか知ってもらうことが多いのですが、

「この曲は、なにをやってもうまくいかない、不幸な人の話で、
 ゴルフを予定すれば雨が降り、パーティをやったら近所から苦情が来、
 ラブレターを書いたら返送されてきたという、かわいそうな歌詞で。。。」

と説明したら、ベーシスト氏が、
「単なる返送じゃなくて、着払いなんだよっ。
 そういうことをやるのは間違いなく女だね。
と間髪いれず補足してくれました。

調べてみたら、正確には、「さようならのお返事を着払いで送りつけてきた」でした。
ひどい。。。
それにしても、ベーシスト氏、なにがあったのか。

マット・デニス作だから、元来男性がうたう歌、ではあるのでしょうが、
確かに、これはそういう意味でも男性専用曲なのか。。。も?
マット・デニスは自虐ネタっぽく笑いをとっていたようですが、
これを女性が歌ったら、笑いはとれないですもんね。


先日の「ヴァレンタイン氏ハゲ疑惑」以来、男うた、女うたについてのアンテナがたってしまいました。



おまけ
「Everything happens...」入りCD。

マットデニス「プレイズアンドシングス」
マット・デニス「プレイズ&シングス」
本家マット・デニス氏の1953年、ハリウッドのクラブでの弾き語りのライブ。
小粋でスインギーなピアノにのせて、次々と繰り出される軽妙な歌。
さぞ、お酒がおいしい夜だったろうなあ。。。
お客様にいただいたCDですが、はまりました。



チェットベイカー「レッツゲットロスト」
チェット・ベイカー「レッツ・ゲット・ロスト」
ヤヴァイです。
手近な強いお酒をストレートでかあぁっとあおったら、
さっさと寝てしまいしょう。
本気で落ちたい貴方におすすめ。








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先日「My Funny Valentine」は女性に歌ってもらいたい曲、とここで書いたら、
あるお客様から、「それなら、この曲はゼッタイ男の歌だ!」とのご意見をいただきました。

それは、「I wish you love」
フランスの歌手シャルル・トレネ(大好き!)の「Que Reste-T-Il de Nos Amours?」(私たちの愛に何が残っているのか?)に、
Albert Beach という人が英語で歌詞をつけたものです。

内容は、別れた恋人の幸せを願う歌。

春には青い鳥が君に歌をささげてくれますように
夏には木陰でレモネードを飲んで涼めますように
冬には暖かい暖炉、
そして、雪の日でも、愛する人がいますように。
(私たちの恋は終わってしまったけれど、心をこめてそう願います)

といった感じの歌詞なのですが、
よくいわれるように、
別れた恋人に対して、男性はいつまでもひきずるけど、
女性は「上書き保存」、すなわち、すぐ忘れて次にいってしまう、という傾向にある以上、
このような歌詞は男しか歌えないだろう、とそのお客様は主張するわけです。

そういえば、男性の書く小説にも、「忘れえぬ女(ひと)」ともいうべきジャンルがありますよね。
昔のつきあったけれど、うまくいかなかった女性のことを「ファム・ファタル(運命の女性)」として
いつまでも心に大事にしまっているというか。。。

なるほど、そういわれてみるとそうなのかもしれませんね。。。








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おなじみ「My Funny Valentine」(Lorenz Hart & Richard Rodgers)。
2/14が近づくと、街のジャズバーでも、いろんなシンガーがこれをとりあげます。

私は、映画「恋のゆくえ」のラストで、ミシェル・ファイファーが歌っているヴァージョンが好きですが、
有名なところでは、チェット・ベイカー、フランク・シナトラ、マイルス・デイヴィス(もちろん演奏のみ)、と
男性ミュージシャンがととりあげることも多いようです。

でも、私は、この曲は、女性専用曲だと思います。
歌詞の「she」と「he」を取り替えて、女性が男性目線の曲を歌う、
ということはよくありますが(「The Girl from Ipanema」を「The Boy from。。。」として歌うとか)
この曲は、そういうことではなく、女性に歌ってもらいたい。

なぜかというと、
男性歌手はけして歌っていない、この曲のヴァース(注*)部分で、
恋人のヴァレンタインは、どうやら、「薄毛」(表現を自粛してみました)らしいことが歌われているからです。
「The vacant brow and Thy tousled hair」
額がvacant(空き)で、髪がもしゃもしゃって。。。
(英語に詳しい方、違ってたら教えてください)

これは、いわゆるバーコード系なのか、
それとも、ウディ・アレンとか
小日向文世や、モト冬樹、ニコラスケイジとかその系列なのか...?
個人的には、昔ERにでていたドクター・グリーンとか、、カミングアウト後のショーン・コネリー、あと名前は忘れましたが「トランスポーター」の主人公とか、好きなんですが。


とにかく、曲の本編で、彼女は、ヴァレンタイン氏に向かって
「Don't change a hair for me Not if you care for me」
私のことが好きなら、髪の毛一本だって変えないで、と薄毛のカレに向かって切なく歌い上げています。
この歌詞、それだけとりあげると、なんで急に髪の毛がでてくるのかわからないのですが、
ヴァースを読むと納得できる内容です。

ヴァース自体は、シェイクスピア調の古めの英語で書かれている(当時のはやり??)ためか、
女性シンガーにもあまり歌われることはないようですが、
薄毛のカレに向かって、
「ギリシャ彫刻ほどカッコよくないし、写真向きでもないルックスだけど、
 そのまま変わらないで」
と歌っているのかとわかると、これって、結構最高のラブソングなのではないかと思います。

しかし、一方、意中の男性から
「君はそんなにルックスはよくないけど、性格が好きだから、変わらないで」
って言われたら、
ギリギリ、コイツはB型なんだな、っと思ってひきつり笑いしますが、
でも、同じ内容を、あの美麗なメロディで切なく歌いあげられたら、相当ハラがたつかもしれません。
嘘でもいいから、「キレイ」っていうのが、愛っていうもんだろうが!
勝手なようですが。

だから、この歌は男性には歌ってほしくないのでした。


2/14は新宿「J」にてお待ちしています♪


*注 ヴァース(verse)
 歌のいわゆる「前フリ」。
 ジャズのスタンダード・ナンバーはミュージカルからとられていることが多いので、
 たいてい、劇中のセリフから歌にはいる前に、セリフでも歌でもない前口上がついています。
 現在は、歌われることも歌われないこともあります。

 







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修辞法です。
シェイクスピアの例をだすまでもなく、西洋人の得意技。
おもに異性をくどくときに威力を発揮します。
日本では平安歌人くらいまではまだ太刀打ちできるけど、近年は。。。う~ん、どうだろ。

「お父様への愛は海より深く、山より高く」(たしかfrom「リア王」)とか、
「君を6月のバラにたとえよう」(同じくシェイクスピア)とか、
「かささぎの渡せる橋におく霜の」(from百人一首とか)

もっとわかりやすくいえば、
「君のためならたとえ火の中水の中」的な、アレです。
ほとんどがMade in Americaなジャズのスタンダードナンバーの歌詞にも、そんな修辞法が満載ですが、
私が好きだなあと思ったのをいくつか。


おなじみ「Fly me to the moon」(Bart Howard)
「私を月に連れて行って。星に囲まれて遊んでみたい。木星や火星の春が見たいわ。
 ...っていうのは、手を握ってキスしてほしい、って意味なんだけど」
あまりに修辞が過ぎて、説明がないとわかんないです。

「All of you」(Cole Porter)
「君のスイートなとこが好き、純粋さが好き、君の瞳が好き。腕が好き。口が好き」ってほめているうちに
舞い上がって、
 「君の東も西も南も北も好き。」
よおく考えると、アンタ世界中が好きなんじゃない!でもかわいい~♪

「How long has this been going on?」(G. Gershwin/I. Gershwin)
恋に目覚め、夢中になってとろけそうな主人公の一言。
「コロンブスが新世界を発見したときってこんな気分だったんじゃないかしら」
おしゃれ。座布団一枚。

「Our love is here to stay」(G. Gershwin/I. Gershwin)
「僕たちの愛は永遠。
 ロッキー山脈が崩れても、
 ジブラルタル海狭がなくなって土くれに戻っても」
出た。アメリカ人の本領発揮な感じ。
これを照れずに言えるのは歌だからかも。

そして、私が今いちばんスゴいと思っているのは、コレ。
「My Romance」(Lorenz Hart/Richard Rodgers)
「私のロマンスには月も星も珊瑚礁も必要ないの」
と、オーソドックスな比喩から始まり、オチが、
「あなたがいればスペインの城もいらないの。私のロマンスはあなただけいればいいの。」

「スペインの城」っていう比喩はなかなか出てこないです。
これがルイヴィトンのバッグなんかいらないのとか、車は国産車でいいのとか、そういう現実的(?)な例じゃないところがエライ。
「そうかあ。スペインの城はあげられないけど、じゃあ、ダイヤの指輪くらいなら買ってあげようか」
と、うっかり思ってしまいそうな...思わないか。

ていうか、「スペインの城」。
これが出てくるバックボーンをもっている人とお付き合いするのは大変そう。。。

ちなみに、私は女性シンガーの伴奏が多いので、訳詞は女性の立場になっているものもありますが、もちろんもとは男性が歌っていたものも多いので、これらの修辞法は男女共用と思っていただいて大丈夫です。
効果のほどはわかりませんが。。。




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昨日の満月の写真にネットで「世の中は、、、」というタイトルをふっていた方がいたので、ついつい思い出した百人一首の一歌。

世の中は常にもがもな
渚こぐ
あまの小舟の
綱手かなしも

(鎌倉右大臣=源実朝)

(詳しい解釈はコチラをご参考ください)

無常の世の中にあって、ごく普通の日常の風景がいとしくせつない、という歌です。
戦乱の鎌倉時代、将軍の家に生まれて武将として生きながら、文学への道が捨てきれず、京都の藤原定家に師事し、歌を作り続けるも28歳にして暗殺される。。。

という波乱の生涯の人でしたが、
この歌の内容で、あるスタンダードソングを思い出しました。


素晴らしき世界なんて言っても、世の中、戦争や貧困や、悲惨なことばっかりだ。でも、ちょっとこのルイ爺さんの言うことを聴いてくれ」
ベトナム戦争の時、サッチモ(ルイ・アームストロング)が「What a wonderful world」をこんな語りだしで歌いだしたヴァージョンがあり、以前TV番組でみて涙したことがあります。

(歌詞についてはコチラをご覧ください)

「木々の緑、バラは赤、君と僕のために咲き誇るのを見て、世界は素晴らしいと思う」
と、いかにも普通のラブソング風に始まって、

「虹の七色、行きかう人々の顔、握手をかわし、はじめましてと挨拶する、それは、愛している、と同じ意味」
「泣いている赤ん坊も、やがて僕が知っている以上のことを学んでいく。世界はこんなにも素晴らしい。」

ごくありふれた日常がこんなにいとしい。
そのありがたさをエネルギーに変えていきたい。

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Information

廣田ゆり(ひろたゆり/ピアニスト・作曲)
  • Author: 廣田ゆり(ひろたゆり/ピアニスト・作曲)
  • 東京都中野生まれ。かに座AB型

    廣田ゆり(ひろたゆり/ピアニスト・作曲)プロフィール

    ジャズピアニストとして都内ライブハウスに出演しつつも、スウィンギー&スウィートな音楽性で、ノスタルジックポップスバンド「黒船レディと銀星楽団」、エキゾな「モスランズ」、ビッグバンド「Gentle Forest Jazz Band」のCD、ライブに参加するなど、
    ユニークな活動を続けている。

    「古本屋のワルツ」に代表される、古い映画音楽のような、ロマンチックなメロディメイキングのセンスに高い評価がある。

      現在はバイオリンとコンガを主軸としたライブシリーズ「超素敵音楽会〜月夜の散歩」が好評。

    リーダーCDに「ザ・ローリング・リリ~リリー婦人の7分半ピアノロール」(2009)、「ノミのサーカス」(2015年8月)など。

    大事にしていること。明日はどうなるかわからないからこそ、音楽によって、その場の空気を多数の人とわかちあえる瞬間。

    趣味。月夜の散歩。古い洋館めぐり。お茶を飲むこと。本を読むこと。絵を見ること。昼間のビール、夜更けのワイン。

    レッスンもいたします♪
    生徒募集中。
    Contact
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